ようやくリリースにこぎつけました。AIによるコーディングが当たり前になった今、仕様だけを見ればシンプルな録音・文字起こしアプリをつくるのに、9か月もかかるなんて、いまだに信じられません。
私は、自分自身の課題を解決するために Hemory をつくり始めました。その後、WizNote の CEO を務めるジュンを口説き、仲間になってもらいました。数年前に ONES が WizNote を買収して以来、私たちは次世代のノートプロダクトはどうあるべきか、よく話し合ってきました。
ジュンはノートアプリの世界で20年以上の経験があり、Obsidian や Notion はもちろん、ほぼすべてのノートアプリの歴史を知っています。私が何より尊敬しているのは、今でも Roam Research を使い続けていることです(知っているのは古参のユーザーくらいかもしれません)。
ジュンは Hemory にすっかり夢中になり、毎晩のように夜明けまでコードを書いていました。私は何度も「もう帰って寝てください」と声をかけたほどでした。朝8時を過ぎて仕事を始めると、午前5時にジュンがコミットしたコードで、もうビルドが通っている。そんなことが何度もありました。彼の言葉を借りれば、「ノートアプリはもう存在しない」。
話を私自身の課題に戻しましょう
録音や文字起こしを使いたいと思ったとき、まず会議メモから始める人は多いでしょう。私もそうでした。Granola や Otter のようなソフトウェアがあり、やがて専用の録音デバイスも登場しました。Plaud のプロダクトデザインは本当にすばらしく、発売されるとすぐに購入しました。
AI文字起こしの可能性を知ってしまうと、求める水準も上がります。そうなると、これらの製品では解決できない課題がいくつか見えてきました。
1. ずっと聞き続け、記録してくれること
録音を始めるのをいつも忘れてしまいます。止めるのもやはり忘れてしまいます。会議が半分ほど進んでから、そもそも録音が始まっていなかったことに気づくこともあります。逆に、会議が終わってからかなり経って、まだ録音が続いていることに気づくこともあります。その結果、いくつもの別々の会話がごちゃ混ぜになり、一つの塊になってしまうのです。
一日の仕事の半分から3分の2は、会議に費やされています。録音アプリやデバイスをつねに気にかけ、操作し続けるだけで、かなりの注意力を奪われます。
「いっそ、ずっと録音しておけばいいのではないか」とも考えました。しかし、録音・文字起こしソフトの多くには、1ファイルあたり4時間までという制限があります。それに、1日の中では話題が次々と変わります。それらを無理やり一つの会議メモに押し込めたくはありません。
2. 話したこと、聞いたことを、どんな角度からでも呼び出したい
会議が終わった瞬間にメモができあがることは私にとってそれほど重要ではありません。必要なときに、必要なことを思い出せることのほうが大切です。
そして、それは従来の意味での検索ではありません。キーワードでいくつかのメモを見つけて、それを一つずつ読んでいきたいわけではないのです。そうではなく、時間も会議もまたいで、あるテーマについての記憶を取り出したいのです。キーワードで探している時点で、メモはすでに本来の情報量を失っています。その記憶を手がかりにすれば、AIと一緒に、そこからさらにいろいろな仕事を進められます。
私が求めているのはこういうものです。あらかじめ決めておいた時間帯、たとえば仕事中の9時から20時まで、サービスが私のそばで、私の周りで起きることをすべて聞き続けてくれます。私が何もしなくても、音声をアップロードして文字起こしを行い、実際に話された内容に基づいて、一日を複数の会議や会話に分けてくれるのです。
自動で切り分けられた会議や日常の会話をタイムラインで眺めれば、その日にどんな話題があったのかを振り返れます。要約も読めます。あるいは、私が普段使っているエージェント、Codex や OpenClaw にいつでも話しかけて、仕事や日常で Hemory が聞き取った内容を掘り起こし、整理し直すこともできます。
会議の文字起こしが欲しいわけではありません。私が交わすすべての会話を記録し、自動的に記憶として残してくれるツールが欲しいのです。
探してもそのようなサービスは存在しませんでした。だから、自分たちでつくりました。
Hemoryという名前に込めたもの
Hemory は、Hear(聞く)と Memory(記憶)を組み合わせた名前です。
聞いて残す。
Hemoryをつくりながら、使ってきました
ここまで説明してきた機能はすべてリリース済みです。私はこのプロダクトをつくりながら使い続けてきました。かれこれ7か月以上、仕事中は Hemory をデフォルトでオンにしています。
Hemory は iPhone で使えるほか、Apple Watch にも対応しています。Apple Watch で使う Hemory は、他社製の録音ハードウェアでは味わえない体験を提供します。この点については、別の記事で改めてご紹介する予定です。
なかでも、Hemory を Codex に接続して、こんな質問までできるようになったことには、本当に驚きました。
- 昨日、何か面白いことを聞きましたか?
- 先月は何を聞きましたか?
- 最近話し合っていた新機能の PRD を書いてください。
- 聞いた内容をもとに、半期の振り返りを書いてください。
- 今月何度か話してきた料金戦略を競合分析にまとめてください。
Codex が Hemory の記憶を呼び出し、一瞬考えてから答えを生成し始める。その瞬間、背筋がぞくりとしました。Hemory がただ記録しているのではなく、そこにある記憶を使って、私のために考え始めたように見えたのです。
それからは、もう一日たりとも記録を逃したくなくなりました。すべてを残しておきたいです。
Hemory は、自分専用の第二の脳であり、デジタルアシスタントでもあります。しかし、完全な記憶がなければ、私が何者なのか、どこから来たのか、どこへ向かおうとしているのかを知ることはできません。
Hemory を単なるアシスタントと呼ぶだけでは、少し控えめすぎます。Hemory は、自分自身のクローンに近い存在です。Hemory が私の話したことをすべて知り、理解し、私と周りの人たちとの会話をすべて聞いてくれるなら、私は Hemory であり、Hemory は私です。
これはまだ小さな始まりです
小さなプロダクトに見えるかもしれません。それでも、チームにいる数人の完璧主義者たちは、リリースに踏み切るまでに、プロダクトを3度もつくり直しました。こだわり抜いた結果です。
Hemory の使命はとてもシンプルです。
自分が話したこと、聞いたことをすべて記憶する。失われないコンテキストを、AIがすぐに使える状態で。
ウィトゲンシュタインは、かつてこう言いました。「私の言語の限界が、私の世界の限界を意味する」。
人が世界をどう捉えているかは、言葉にも表れます。AIはますます強くなり、何でもできるようになり、しかもその多くをよりうまくこなすようになっています。
私たち人間にとって、何を考え、何を話すかは、今や人と人を分ける最後の手がかりになりつつあります。私は Hemory にこれまで私が話してきたことをもとに、MBTI を判定してもらいました。答えは、驚くほど正確でした。今度は思わず息をのみました。Hemory が、私自身もまだ言葉にしていなかった部分まで、静かに捉えていたのです。うれしさと驚きが広がり、もっと先のことまで知りたくなりました。
Hemory が、外の世界に目を向けるときも、自分自身の内側を見つめるときも、心強い相棒になってくれることを願っています。そのうえ、私たちの代わりに仕事まで片づけてくれたらと思っています。
Hemory.com からダウンロードしてみてください。気に入っていただけたらうれしいです。